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整数論が高校の教育課程に導入されて数年経ちます。以前から、ユークリッド互除法などを高校で教えるのも面白いかなと感じておりました。また、難関大学の入試問題には昔からよく出題されており、数学オリンピックでも必ず数問取り上げられています。
整数の問題は数を変えてしまうと全く別の問題に変化してしまいます。難易度も格段に上がります。そういう意味でも面白いジャンルではないかと感じています。
はじめに、本校の生徒から出題された問題を紹介します。

[問題1]  \displaystyle\frac{2^n+1}{n^2}が整数になるような正の整数nを求めよ。

インターネットで調べると、「整数のマスターデーモン」と呼ばれています。

\displaystyle\frac{2^n+1}{n^2}が整数なら、\displaystyle\frac{2^n+1}{n}も整数となります。
[補題] \displaystyle\frac{2^n+1}{n}が整数ならば、\displaystyle\frac{2^{3n}+1}{3n}も整数である。
[補題] \displaystyle\frac{2^n+1}{n}が整数ならば、n=1またはn3の倍数である。

[定理][問題1]の解答は n=1,3の場合のみである。

証明は楽ではありませんが、挑戦してみると面白いと思います。出題してくれた生徒はLTE補題を使って解いたそうです。私は知りませんでしたが、数学オリンピックでは定石の手法らしいです。
次に、私から生徒に向けて出題した問題を紹介します。難関大学の入試問題として過去に出題された問題をもとに考えました。ぜひ挑戦してみて下さい。

[問題2] a^n-1=p^mを満たす2以上の正の整数a,n,m,p(ただしp素数)を求めよ。

私はこの問題を解くのに相当な労力と時間を費やしましたが、本校の生徒は数日で解答を作ってきました。この問題のもとになっているのは「カタラン予想」です。

[カタラン予想] x^a-y^b=1を満たす2以上の整数x,y,a,bは、3^2-2^3=1のみである。

いまや予想ではなく、証明された定理となっています。

以下の補題は、通称LTE補題と呼ばれています。
補題](Lifting The Exponent Lemma

整数apでちょうどn回割れるとき、n=(a{)}_pと表す。

pが奇素数x-ypの倍数、x,ypの倍数ではないとき、
(x^n-y^n{)}_p=(x-y{)}_p+(n{)}_p が成り立つ。

 この補題を使って[問題2]を解いてみましょう。

(解法)まず、pが奇素数の場合を考える。

a3以上のとき、(a^n-1{)}_p=(a-1{)}_p+(n{)}_pより、(n{)}_pは正の値をとる。

A=a^{\frac{n}{p}}とおくと、A^p-1=p^mとなるので、(A^p-1{)}_p=(A-1{)}_p+(p{)}_pより、A-1=p^{m-1}となる。よって、A^{p-1}+\cdots+A+1=pとなるが、これは矛盾である。なぜなら、A3以上なので、左辺はpを超える。

a2のとき、p^m-1=2^n-2となるので、mは奇数であり、

p^m+1=(p+1)(p^{m-1}+\cdots+1)因数分解できる。

\frac{p^m+1}{p+1}\equiv1(mod 2)なので、m=1でなければならない。

m2以上としているので、この場合は解なしである。

 次に、p=2とする。

a^n-1=2^mより、aは奇数である。

\frac{a^n-1}{a-1}が偶数となるので、nは偶数でなければならない。

a^{\frac{n}{2}}=bとおくと、b^2-1=2^mとなる。

このような式が成立するのは、3^2-1=2^3のみである。